スパム送信サーバ管理者へ処置依頼をすることの意義 |
リニューアル後、未改訂です。 | 2002/01/18 β1.0版 2002/01/20 β1.1版 |
よりよいスパム抑制の制度・システム作りに向けて 以下の考えはいろいろ他の方の啓発を受けた上で至った、2002/01現在の高崎の考えです。
2002年1月現在、日本ではようやくスパム規制に関する行政府、立法府の取り組みが開始されました。しかしながらスパム規制に大切なのは法律で禁止されることではないと考えます。
皆様御存じのように、スパム規制は表現、言論の自由とも絡む問題であり、非常に微妙な問題です。私達がスパム反対を主張するのはインターネットの快適な環境を維持するためであり、その中では『快適な環境』には『表現の自由』が含まれることも見逃してはなりません。それを考えた場合、国家がスパムというものに対して、積極的に旗振り役を行い、取り締まれば良いとは私は考えていません。それをすることで、将来的に『自由』が拘束される可能性を生み出してしまうならばこれほど本末顛倒なことはありません。
ではどうしたら良いのでしょうか?
法律で禁ずるにせよ、禁じないにせよ、大切なのは私達が迷惑千萬だと感じるスパムとその送信者への取り締まりが実質的に行われることであるはずです。そして実際にスパマーを取り締まり、その行為を抑制できるのは、法律のバックアップがあるにせよないにせよ、送信者側サーバのネット業者だと考えます。私はネット業者の方達が、個別の取り組みと、さらには横断的な取り組みをすることで、この問題を解決する方向に進むことを強く願っています。『ネットの迷惑行為の罪はネットに関する罰で受ける』、すなわちネットの迷惑行為者や犯罪者に対し、ネット業者が積極的に彼らのネット使用を制限するようになることを期待しています。具体的にはそういう人物・グループのブラックリスト作成が必要になるでしょう。イメージとしては金融業者で作られているブラックリスト方式です。
しかしながら、一歩間違えばネット上の自由を無くす危険性をもたらすこのブラックリストの扱いは、極めて慎重に行われなければなりません。このリストを国家が積極的に利用し、用いることは将来の為に必ずしも良いことだとは言えない可能性があるでしょう。
それを防ぎつつ、しかし上述の方法を目指すにはネット業界が自主的に、中立・公正な、ネット業界自身の為のネット犯罪(スパムを含む)抑止制度を作ることだと考えます。これをするにはネット業界全体の幅広い協力が必要です。また個別にスパム防止の問題啓発に取り組んで頂くことも極めて重要です。
その制度整備へと至る上で、スパム受信者が適切な送信側サーバ管理者へ処置依頼を送ることはとても重要なことだと考えています。
周知のように2001年に携帯電話スパム問題が極めて大きな被害をもたらしました。携帯スパムでは送信者側の情報が一切得られないため、受信者側であるキャリアに苦情が殺到することになりました。しかし受信側であるキャリアが有效な手だてを打てるわけがありません。その結果、スパム送信の為のエラーメールが7割以上を占めるという、とんでもない事態になりました。しかも考慮しなければならないのは、残りの届いたメールの中に相当数の「届いてしまった迷惑メール」が存在したということです。この被害の実態については簡単に把握できるものではありませんが、キャリアが数として出すことが出来たのはエラーメールであり、受信者が受け取った迷惑メールではないことに注目せねばなりません。
被害者達の声は一時期10万件にも上る苦情として現れました。この背景には遙かに多くの被害者達の不満があったことが想定されます。すなわち現在のところ、迷惑メールの被害については「被害者の声によりその大きさを把握するしかない」のです。その為に、スパム被害者が適切な苦情先に連絡することは極めて重要だと感じます。
しかしながらその一方で、仮に被害者が全員が全てのスパム苦情を行っていたら送信サーバ管理者はスパムと同じ数だけの処置依頼(苦情)を受け取ることになります。これはこれで大変なことであります。けれども取りあえずはその方向を目指さなければ、おそらく携帯電話で起こったように最後の最後まで、サーバ管理者の方々は迷惑メールがどれほどの割合をしめているかを正確に認識出来ないのではないでしょうか?
無論、よりよいシステムは、最小限の苦情でサーバ管理者の方々がスパムメール発信を把握し、それを停止するシステムです。しかしながら「通信の秘密」などの問題があり、そのような效率的なシステムは当分出来ないのではないか、と考えています。また、そのようなシステムを構築して頂くためにはネット各社においてスパム被害を真摯に受け止めて貰わねばならず、その為にも被害者の処置依頼(苦情)はやむを得ないことだと考えております。
各ネット業者にとってもユーザにとっても有り難い、スパム抑制制度の確立を願い、それまでの暫定的なものとして「送信サーバ側への処置依頼」を行うことを多くの人に勧めさせて頂きます。
このことに対してネット業者皆様におかれましては、御協力と御理解を御願いすると共に、新制度の確立へ向けた積極的な取り組みを期待しております。